身寄りのいない人の法律
身寄りのいない人が死亡した場合
身寄りのない方が死亡された場合、「墓地、埋葬等に関する法律」に基づき、市区町村において遺体を引き取り、埋葬しています。この場合、市区町村長は法務局長の許可を得て、職権で戸籍に死亡の記載をします。そして、自宅で孤独死した場合は、検死が行われた後、警察から市区町村が遺体を引き取り、葬儀、火葬を行った上、永代供養をしていただける寺院に遺骨を納めます。これらに要する費用は、まず死亡者の遺留金品等を充当し、不足する部分は市が立替え、最終的に県が負担します。反対に、遺留金品等を充当してもなお残余金が生じる場合には、その金額にもよりますが、国庫に帰属することになります。なお、路上及び旅行中に死亡した場合には、適用される法律が異なり、遺体の所在地の市区町村が、状況、相貌、遺留品その他本人の認識に必要な事項を記録した後、遺体の火葬及び埋葬を行います(行旅病人及行旅死亡人取扱法7条)。
相続について
- 家族と疎遠になっている方
家族がいる人の相続において誰が相続人となるかについては、民法により被相続人(亡くなった人)と一定の身分関係にある者を相続人とし、被相続人の子を第1順位、被相続人の直系尊属を第2順位、被相続人の兄弟姉妹を第3順位とするとともに、被相続人の配偶者は常に相続人となるとしています。なお、民法の定める相続人が被相続人の死亡以前に死亡したり、相続権を失ったりしたとき、その子が相続人に代わって相続する代襲相続の制度を設けています。
- 身寄りがいない方
身寄りのいない方が無くなった場合、相続人が不明で相続人不存在となる可能性があるため、相続人が現れるまで相続財産を管理し、相続人の不存在が明らかとなれば相続財産を清算し、最終的な帰属を決める必要があります。
そのため、相続人の不存在の疑いがあるときは、相続財産は相続財産法人という法人になるものとされています(民法951条)。
相続財産法人は、相続人の存在が明らかでないときに、特段の手続を要さずに成立します。
相続財産法人が成立したときは、家庭裁判所は、相続財産管理人を選任することになります。 相続財産管理人選任の申立権者は、利害関係人又は検察官です。利害関係人とは、相続債権者、特定受遺者、相続債務者のほか、被相続人に対して何らかの請求権を持つ者が該当すると考えられています。家庭裁判所は、相続財産管理人を選任したときは、遅滞なく官報によって公告します(民法952条2項)。そして2ヶ月以内に相続人が現れなかったときには清算手続きを行い、2ヶ月以上の期間を定めて、相続債権者と受遺者に対する公告を行います(民法957条)。
それでも相続人が現れないときは、家庭裁判所は6ヶ月以上の期間を定めて、あらためて相続人捜索の広告をします(民法958条)。この期間までに相続人が現れないときは、相続人は相続する権利を失います(民法958条の2)。相続財産管理人は相続財産の管理・処分を行いますが、特別縁故者がいれば家庭裁判所の許可を得て相続財産を分与して、残った残余の相続財産は、国庫に帰属することになります。 特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者を指しますので、内縁の妻や夫などがその例です。
遺言について
身寄りのいない人が亡くなると、その財産は国庫に帰属してしまいます。
よって、内縁の妻や夫、療養看護によってお世話になった人に財産を与えることはできませんし、福祉団体、ボランティア団体、市区町村に寄付もできません。
そのようなときに、遺言書を作成しておくと、これらの人や団体に財産を与えることができるようになります。遺言は、どのような形で遺言をするかという方式の違いによって、種類が分かれます。
- 自筆証書遺言
遺言者が誰の補佐も受けずに自分ひとりだけで書ける遺言で、遺言の中では最も簡単に作成することができます。
- 秘密証書遺言
遺言の内容を誰にも知られたくない場合には、秘密証書遺言にします。内容は秘密にできますが、それが秘密証書遺言であることを、作成したら公証人と証人2人に証明してもらわなければなりません。
- 公正証書遺言
遺言を公正証書にします。公正証書遺言は、公証人が作るため、原本が公証役場に保管されるため、改変や破棄、隠匿などの危険性もありません。
生命保険信託の利用
生命保険は、保険受取人を親族以外に受取人とすることができません。そこで、自身が亡くなったときに、第三者に生命保険金を渡すことができる保険商品をプルデンシャル生命が中央三井信託銀行との業務提携により取り扱っています。
安心サポート信託(生命保険信託型)は、主に次のようなご要望をお持ちのお客さまにご利用いただけます。
- 法定相続にとらわれることなく、自分が経済的に支援したい人のために財産を活用できるようにしたい。
- 自分が亡くなった後も、一定期間、社会・公益のために財産を分割して寄付していきたい。
■ 「安心サポート信託(生命保険信託型)の仕組み」
葬祭・埋葬方法の指定(死後事務委任契約)
遺言では、葬儀や法要のやり方を指定することは、それらが法定の遺言事項にあたらないために、葬儀や法要等に関する遺言は法律上の遺言事項ではなく、遺言者の希望の表明として、遺産の分配等に関する条項に続く付帯事項(付言)としてなされることになります。最後の自己表現として葬儀のやり方を具立的に指定したり、散骨等を埋葬の方式として指定する場合には、遺言者の生前に遺される方々に対して遺言者の希望をお伝えし、実際に葬送を行うことになる人々との話あいや準備をしておくことも大切です。遺言では、遺言者の希望する葬送が確実に行われるようにするために、祭祀に主宰者を指定することも可能ですし、遺言執行者を指定して、遺言執行者との死後事務委任契約を締結する方法も考えられます。任意後見人・成年後見人等は、ご本人が死亡した時点でその職務が終了します。見守り契約のみ場合では、死後の事務を行うための財産的裏付けがなく、葬儀費用等の支払いを行うことができなくなります。そして、具体的な葬儀内容を生前に葬儀会社に予約することもできます。また、80歳まで契約可能な保険を活用して、生前予約された分の保障を保険で賄うことができます。
[短期的な死後の事務の内容 ]
・委任者の生前に発生した債務の弁済
・委任者の死後の葬儀、埋葬もしくは永代供養に関する債務の弁済
・賃借建物の明け渡し、敷金もしくは入居一時金等の受領
・親族関係者への連絡
・家財道具や生活用品の処分に関する事務
認知症等になって判断能力が無くなる前に(成年後見契約)
成年後見制度とは、判断能力の不十分な方々の保護を行い支援する制度です。
この成年後見制度を利用することで、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々を保護することができます。成年後見制度は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自らの生活において、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)です。
これらの契約は、公証人の作成する公正証書で用いて行います。
そうすることで、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が、任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもと本人を代理して契約などをすることが可能になります。任意後見制度を利用することで、本人の意思にしたがった適切な保護・支援をすることが可能となります。